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解脱失敗の懺悔動画を見て、久々に「坊主失格」を読み返してみた。
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・相手の寂しさや自己愛につけ込む。(『坊主失格』123頁)
・「別れよう」と言い出したり、相手の前で突然不機嫌になったり、デート中に理由を告げず突然一人で帰ったり、冷たい言葉をかけたりして、徹底的に相手を不安に陥れる。すると、不安ゆえに相手が自分に媚びてくる。「どうしたの? 私、なにか悪いことしたかな、ごめん」「別れたくない。私に悪いところがあるなら直すから」と言ってくる。そうしたら、優しい言葉をかける。(『坊主失格』123〜129頁)
・浮気は、交際相手を不安にする方法のうち、もっとも強力なものの一つである。(『坊主失格』130頁)
・不安ゆえに交際相手が自分に媚びてくるとはいっても、あまり不安が大きすぎると女も負荷が大きくて壊れてしまうので注意する。(『坊主失格』131頁)
・相手の好きな服・音楽を否定し、捨てさせる。(『坊主失格』138頁)
・エンゲルスの理論「浮気しちゃいけないというのは相手を縛り所有する発想であり、本当に相手のことが好きなら相手の自由を奪うようなことはしないはず」と相手に言う。相手が反論したら「なにがあっても愛していると言ったじゃないか!?」と責める。(『坊主失格』138頁139頁)
(『坊主失格』139頁)
また、彼女が私にプレゼントをしてくれるというとき、彼女に「なにが欲しい?」と聞かれ、「そんなことを事前に言われるのは恩を着せられるような気持ちになるから、聞くな!」と怒鳴り、そのくせ自分が気に入らないものを買ってきたりしたら、「こんなものいらない!」と言ってまた怒る。彼女にしてみれば、やはり聞かないと不安になるのは当然で、次にまた「なにが欲しい?」と聞くので、「だから聞くなと言ったでしょ!」と怒る。
はじめのうちは、「どうしてそんなに怒ったり、私のことを否定したりばかりするの?」と泣く彼女に対して、「好きだからこそ、自分の思っていることを伝えたいんだ。じゃあ、もうこれからはなにも伝えなくていいんだね」と、今思えば、ある種の脅迫をしていました。これに対して彼女も可哀想に、「ううん。責められるのは好かれていて、期待されてるからだってわかるから……」といった具合に答えてしまいました。
(『坊主失格』130頁)
「ねえ、どうして? 私のこと好きじゃなくなったの!?」などと責められると、かえって私の心の中には、「自分のことをめぐって、こんなに興奮して泣いてくれるなんて、この僕はとても価値のある存在なのであーる」という快感が生まれるのでした。
(『坊主失格』130頁)
「この人がこれほど憎悪にかられるのは、私のことをドウデモイイとは思えないからであって、その意味で精神的に私は彼女を支配できているのであーる」と。
(『坊主失格』133頁、引用中の太字は実際は太字ではなく強調点を打ってある)
ある日、別れ話がこじれて喧嘩になったときのことです。
恋人がナイフを持ち出して「もう私が死んじゃってもいいんでしょ」と言うのです。私は内心「やれやれ、いよいよ刺激的な物語進行になってきたな。これからどうなるんだろう」と困りながらも、「自分のせいで相手が死ぬと言っているなんて」と、慢の快感を感じていたのです。そして、冷静ぶって突き放した言葉を返しました。
「僕だって、いつも死にたいと思っているよ。で、キミが死にたいと思うのなら僕にはそれを邪魔する権利はないと思うよ」と。
「つまり、私に死ねって言いたいのッ」と返され、「いや、死ねとは決して思わないけど、キミには死ぬ自由があるから」などと、屁理屈をこねながら、実際には死ぬ勇気なんかないだろうと、高を括っていました。
ところが、彼女はナイフで手首を切り、私の部屋のカーペットに鮮血が飛び散りました。〜。
(『坊主失格』141頁、引用中の太字は実際は太字ではなく強調点を打ってある)
「こんなはずがない。自分は恋人に暴力を振るうようなひどい男のはずがない。おかしい。彼女のせいだ」
奇妙な考えではありますが、これは当時の私に限らず暴力的な人々の多くが用いる論理なのではないでしょうか。
その考えに従って「君があんなイヤなことを言うせいで、つい暴力まで振るうような』最低な人間に成り下がってしまったよね。お願いだから、僕にこんなことをさせないでほしいんだ」などという台詞をはいたのを、覚えております。
これに対して彼女は「ごめんね。殴るなんてツライよね。私のせいで……。これからは気をつけるから」と、可哀想に謝ってしまったのです。それがまるで王様のようにわがまま放題をしたい私には、また例の「落差ギャップ 」を感じさせ、強い快感を生んだとも、後から振り返ることができるように思われます。
(『坊主失格』144頁)
「前はあんなにも素敵な人で、美しかったのに。なんだい、今のそのていたらくは」
(『坊主失格』144頁)
「頼むから、これ以上、あんなに素敵だったキミの思い出を汚さないでほしいんだ」
(『坊主失格』144頁)
こんなふうに、「キミがいるせいで理想のキミが壊れていくッ」と怒り出すのは男性によくありがちなことのようにも思われます。
こんな異常な怒り方する男は少ない。
「坊主失格」を読んでいると、全く反省も改心もしていないというのがビンビン伝わってくる。「慢」が悪い、「ありがちなこと」だから仕方ない、といった言い訳に満ちている。